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Love Story
月刊「ピアノ」2001年11月号の巻頭特集「宝石占い・デ・バラード」で執筆しました。
パワーストーンとバラードを組み合わせた、愛のミニストーリーです。

あなたはどのパワーストーンの恋をしていますか?
「中川晃教」さんのバラード「I Say
Good−Bye」のイメージで
情熱の赤と冷静の青に揺れる、アメシストの紫の恋。
私たちはずっと、いつも一緒にいて当たり前だった。彼は幼なじみ。
いつもおだやかで、時には強く、私を包むように見守ってくれていた。
勉強をするのも一緒。進学校も一緒。自然に私たちは、これからもずっと一緒だと信じていた・・・。
それは少女の私が、ずっと夢を見ていた神話だったのだろうか。
とつぜん、私の前に現れた、名前のない「あの人」。
知っているのは、パソコンの中のハンドルネーム「Shu」。
出会いのサイトで、なんとなく話が合ってメールのやりとりが始まった。
音楽が好きで、アマチュアバンドでボーカルをやっていた。
私はそっと、「Shu」のライヴを聴きにいった。心を揺さぶるバラードに、私の心は虜になった。
彼は唄った。
「サヨナラ、昨日の自分。明日の僕がどんな暗闇に包まれも、振り返らない」
それは、私の魂を揺さぶる歌声だった。私はいつのまにか涙ぐんでいた。通いつめるうちに恋が始まった。
誠実に、未来を語る幼なじみの恋人。彼は、毎日携帯に決まった時間にかけてくる。
気まぐれにメールをよこし、自分の感情を素直にぶつけてくる新しい恋人。
どちらも、今の私に必要な人。どちらか一人を選ぶことはできない。二つの恋に揺れる私の心。
いつ、どんな決着がつこうと、私の愛に偽りがなかったことは、私だけが知っている。
「桑田佳祐」さんのバラード「白い恋人達」のイメージで
どこまでも透き通る「強さ」。
クリスタルに映るあなたの心。
人だかりのビーチで、彼はいつも真っ黒になって働いていた。みゆきは、その店に毎日通った。
いつのまにか、恋の始まり。
夏が好きな人だった。夏の間は日本で働き、秋風が立つ頃に、暑い国に旅立つ。
そんな暮らしは、平凡な一人暮らしのOLのみゆきにとって夢のような話だった。
カリブの海の美しさや、道端で一日を寝て過ごす人々の群れ、南国の娘たちの情熱的なダンスの話を聴いた。
みゆきは熱に浮かされたように、話に夢中になった。
もう夏も終わりかけた頃、一度だけ、彼はみゆきの質素なワンルームの部屋を訪れた。
彼女はひまわりの花を花瓶にさし、小さなアクアリウムを買って彼を迎えた。
「小さな海があるね」
彼は本棚の横でささやかなリズムを奏でながらあわ立つ音に、すぐに気付いた。
その夜、二人は小さな波に身を委ねるようにして、熱い夜を過ごした。
彼は旅立った。約束はしなかった。みゆきは、彼の自由を奪いたくなかった。
後悔はしていなかったけれど、その秋の心の寂しさは埋めようがなく、涙はとめどなくあふれた。
そして、冬。窓ガラスを小さく叩く音がした。みゆきはカーテンの隙間を覗く。
外は吹雪だった。窓ガラスを白い大粒の雪が叩きつけていた。
けれども、そこに夏の日に見た、黒く日灼けした顔と、すらりとした姿をみつけて息をのんだ。
「冬の海を見に帰ってきたよ」
彼は白い歯を見せて照れくさそうに笑った。彼女は、彼の熱い胸の中に飛び込んでいった。
「松任谷由実」さんのバラード「守ってあげたい」のイメージで
ムーンストーン。恋の石。
蒼いムーンライト。あの人に私の想いを届けたい。
そっと見守るだけの恋だった。彼のお気に入りのコーヒースタンドの片隅で、彼をみつめるだけ。
たった20分たらずの、ひそやかな彼女だけの恋の時間。
恋のきっかけは、学園祭の美術クラブでみかけた、彼の水彩画。
優しいパステルカラーで、繊細で、温かい血が通っているような風景画だった。
「気に入ってくれたんですか?」
肩越しに、やわらかい声が響いた。ちょっとうれしそうなトーンで。
振り返ると、金髪に銀のリングのピアスをした、端麗な顔立ちのほっそりとした彼が微笑んでいた。
(噂の人だわ・・・) 学園内でも有名なプレイボーイ。そんな軽薄な人が、こんな繊細な絵を描くなんて。
誰も知らない彼の一面を見たような気がした。
そして、ある日由美子は、通学路の小さなコーヒースタンドに、朝、いつも同じ時間、ひとりでスケッチブックに何かを描きながらコーヒーを飲んでいる彼をみつけた。
真剣なまなざし。学園内で見かける、どこか人形のような彼と違っていた。
それ以来、彼女は彼をみつめるためだけに、店に通った。
彼の新しい恋の噂は、その後も次々に浮かんでは消えていった。
そして、季節は過ぎた。次の学園祭。彼の新しい絵を見に行った。
彼女は、一瞬、その絵の前で息が止まるような思いがした。
「たたずむ女(ひと)」そのタイトルの絵には、コーヒースタンドの片隅で、はにかんで、うつむきかげんにコーヒーを飲んでいる女がいた。まぎれもない、由美子の姿だった。
「気に入ってくれた?」
肩越しに、やわらかい声がした。それは実りの秋の、恋の始まりだった。
「スガシカオ」さんのバラード「夜空ノムコウ」のイメージで
瑠璃(ラピス)は、真実の愛を奏でる運命の宝石。
彼の汗から「別れ」の臭いがした。それはマリ子の直感だった。
彼は、いつもと変わりなく、手のひらでなでるように髪を整え、軽く跳ぶようにシャツを着る。
「来週は会えないかもな。部長が営業成績が悪いって、うるさいから」
「会いたくなければ、そう言っていいのよ」
マリ子は、ケンのある口調で付け加えた。
「でも、理由は本当のことを言って」
二人の間に、すきま風が吹くようになったのは、この夏からだった。合コンで出会った、大人の恋。
だが、間もなくちょっとしたことで言い争い、スレ違うようになった。
週に3回は会っていたのが、おざなりな1回に。そして口数も少なくなった。
「君はいつも知りたがるんだよ」
彼はあきれたようなため息をついた。
「本当のこと、とか、どうしてなのか、とか。だけど、そんな理由なんてありゃしない。その時の気分やいろんな都合で変わるんだよ。世の中のほとんどのことはね」
「そんなのは勝手な理屈。真実はひとつだと思うわ」
彼は無言でネクタイを締めた。マリ子も素早くファンデーションを塗り、口紅をつける。
外に出ると夜の空気は寒く、駅に向かって歩く二人の間には距離があった。
彼はぽつりとつぶやいた。
「疲れてしまうんだよ。君と会うとね。なんていうかな、あったかくて、なんでも受け入れてくれる、そんな女になってほしかった」
「それは私も同じね。お互いに、愛されたかっただけだったんだわ」
知ろうとすれば、離れていく。わかりあおうとすればするほど、遠くなっていく。
彼女は空を見上げた。歓楽街の空は、ネオンの光が強く、星ひとつ見えなかった。
「じゃあ、さよなら。元気でね」
冷たい握手をかわして、彼女は背を向けた。星の光が見える場所へ。
マリ子は今、ただ満天の星空の見える場所で、悲しみを癒したいと願っていた。
「ジョンレノン&ヨーコ・オノ」さんのバラード「Milk&Honey」のイメージで
甘い、甘い、恋の蜜。
ローズクオーツが咲かせたピンクの花からとれる、愛の味。
マリッジブルー?そんな言葉、私は知らない。
白いバージンロードを歩く日が近づくたびに、心がときめく。待ち遠しさに、気がおかしくなりそう。
平凡な恋、他人にはそう見えるかしら?
でも、私にとっては一生に一度の、激しい恋。こんなに人を愛したことはなかった。
彼になら、私のすべてをさらけだせる。私になら、彼もすべてをさらけだせる。
出会った瞬間から、運命の恋だと、二人は信じあった。
生まれる前、ふたつに別れた魂が、やっと巡りあい、ひとつになったような歓び。
意地悪な友達は、あきれた口調で言う。
「結婚しちゃったら、もう恋は終わりよ。掃除、育児、洗濯、嫁姑、現実は厳しいわ」
そんな言葉さえ、今の私は微笑んで聴くことができる。
二人の心は、愛でいっぱいで、二人だけの中にとどまらないほど、あふれている。
家族も、友達も、道行く人も、世界中の人すべてを、私の愛で包んであげたい。
そんな私の心は、ローズピンクの花びらに輝く朝露のよう。
この恋の薫りと味と心を、私は一生忘れずに生きていこう。
どんな悲しみも、どんな試練も、この歓びに出会うために訪れたのだと信じよう。
平凡な二人。ありふれた恋。どんな恋にも、尽きることのない愛の泉が湧き出ている。
湧き出る愛の水を、小川から大河に流し、やがて大きな海にたどりつけば、もっと大きな愛の海が心に広がる。
人を愛するという、この想い。この瞬間を体験するために、私は生まれてきたのだから。
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