ロシア語版「スター・ウォーズ」小説(右写真。クリックで別枠拡大)のシリーズを日本語訳して出す事はできないかという問い合わせが舞い込んできた。問い合わせてきたのは、この本の翻訳者と出版社社長である。
 ちなみに、このロシア語版「ファントム・メナス」の元本は、日本で出ている翻訳版と同じテリー・ブルックスによるノベライズである。そして、今回問い合わせてきた翻訳者と出版社社長は、日本でもブルックスの翻訳が出ていることを知ったうえで、ロシア語版から訳して出せないかと言ってきているのである。普通に考えればおかしな話だが、これには理由がある。以前にも書いた事はあるが、面白い話なので事情を詳しく説明しよう。
 ロシアでは、単純に映画のシナリオを文字に置き換えただけのような小説化はしない。また、英語で書かれたノベライズを翻訳する際にも、そのままロシア語に訳して終わりというやり方はしない。
 単純に翻訳しても、映画の人気だけでそこそこ本は売れるかもしれないが、それで読者が満足しなければ、良い評価は得られないだろうし、それ以上本は売れないだろう。また、出版社としても大きく評判を落とすことになる。したがって、ロシアの文学に慣れしたしんだ読者が違和感無く読めるよう、ロシアの小説作法をふまえ、ロシアの読者が読みたがる、そして読んで満足する内容に書き換えるのである。実際、小説作品として独立して書かれた作品に対してこのような処理を行うことは無いようだが、映画のノベライズ作品などでは必須の作業になっているという。
 ストーリーの順序や構成を変えたり、元の映画やノベライズで説明が不足している部分を翻訳者が公式の設定に基づいて説明を加える、登場人物の描写やシーンを加えて人物像やストーリーに厚みを持たせるなどの方法で小説としての完成度を上げ、読み応えのある作品にしようとするのだ。
 翻訳するばかりでなく、そこから話を掘り下げ、膨らませるわけなので、なかなかたいへんな作業だといえるだろう。実際、ロシア語版「ファントム・メナス」は冗談じゃ無いほど長くなっている(^^;)。
 そのような方法で出版されたロシア語版「スター・ウォーズ」シリーズは、ロシア国内で爆発的に売れているとのことで、今回の話も「異本の一つ」として海外でも十分に評価されるだけの内容に仕上がっているという自信があってのことなのだろう。
 同じような話で大成功した例として聞いているのは、ロシア語版「Xファイル」シリーズである。このシリーズは翻訳に加え、ロシアの人気作家が大勢参加してオリジナルストーリーを加えているのだ。言うなれば「Xファイル」の名前と設定を借りた、ロシア版「異形シリーズ」なのである。
 というわけで、ロシア語版「スター・ウォーズ」とか「Xファイル」の出版をどこかで引き受けてくれないものだろうか?